黄瀬戸は桃山時代に焼かれた美濃のやきもので、時代的にいうと、志野や織部の兄貴分に当たります。食器や花入に伝世品が多いなか、鉢には名品がいくつも伝わっています。本作もそんな桃山時代の食器を意識してつくられた作品です。見込みの梅樹文はタンパン(銅緑系の釉薬)と鉄絵で描かれています。
作者の松村氏は、美濃で修行をされた後、故郷の埼玉で主に黄瀬戸を中心とした桃山陶の制作に取り組んでいます。桃山黄瀬戸の油揚肌を目指しながら、地元で採れた土を使って独自の黄瀬戸づくりに挑戦しています。本作はオーソドックスな黄瀬戸で、桃山陶に肉薄する作家の力量を物語っています。