伊賀焼の郷、丸柱で窯を営む柳下季器氏の作品。師匠の杉本貞光氏とともに、茶陶の可能性を日々探求している。作品は井戸の徳利。茶の湯で井戸といえば、「一井戸、二楽、三唐津」といわれるほど、茶碗の代表的な形式。朝鮮半島で日常の雑器(特別な祭器だったという説もある)として使用されていた器を、日本の茶人たちがその侘びた風情を好感して茶席に導入した。柳宗悦はこれを「平凡極まる」「世にも簡単な茶碗」と評した。だからこそそれは「素直」で「自然」で「無心」な美しさを帯びる。柳下氏はそれを徳利で表現した。井戸茶碗のもつ「簡単な」美が徳利に生まれ変わる。それは、日常の晩酌に、あたかも茶室にいるかのような演出を加える。
本文で紹介したものよりやや小ぶりで徳利としては標準サイズ。井戸茶碗同様、高台周りの梅華皮(かいらぎ)の景色が嬉しい。(侘)
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