今回出品している「志野井戸酒盃」の鼠志野バージョン。「大和酒蔵風物誌『出世男』その4」でも書いたが、志野は鬼板(鉄釉の一種)で絵や模様を描いて、その上に志野釉をかけて仕上げるが、鼠志野は器体に鬼板を塗って、それを削ってから志野釉をかける。その結果、鬼板の残った部分は灰色やときに青色を呈し、削られた絵や模様は逆に白く浮き上がる。志野と鼠志野はいわばポジとネガの関係だ。
山田さんの志野の場合、絵や模様を丹念に描くというよりも、釉薬と土と炎のおりなす肌感が全面に出る作風で、それが鼠志野になるとより表現がダイナミックになる。もうひとつの白いほうと比べると、同じ形式でこれほど作風が変わるものかと驚かされる。力強く、いぶし銀の魅力にあふれている。(侘)