「大和酒蔵風物誌『出世男』その4」でも書いたが、志野茶碗の多くは半筒形で、本作のように碗形のものは珍しい。志野はいうまでもなく日本が生んだ独自のやきもので、古田織部に代表される侘茶人たちと独自の展開をみせる。 長次郎茶碗に半筒が多いように、利休は半筒形を好み、これを自分なりに引き継いだ織部は、半筒をよりダイナミックな造形にしてときに歪めた。志野や瀬戸黒はその実験の産物といえる。
作者の山田さんは、志野の発想にはない碗形を適用して、その新しい可能性を拓いた。日本流の「白いやきもの」を碗の造形に収めると、こんなに優美になる。力強い志野の常識から一歩も二歩も踏み出す作品である。(侘)