美濃で黄瀬戸や織部などの桃山陶を追求する西岡悠さんの手になる作品。
桃山スタイルを現代に蘇らせるだけでなく、それを元に様々な造形的挑戦をするのがこの作家の醍醐味。「黒狐手」は、黄瀬戸と瀬戸黒の技法から西岡さんが独自に考案した技法。黒と黄色が入り混じる器肌が黒狐の毛並みのようにみえるのでそう呼ばれる。
五角形の高台といい、亀甲形に削られた腰の部分といい、「御所丸茶碗」の特異なつくりをかなり意識した造形になっているが、これが黒狐手をまとうとまったく別の新しい様式が生まれたようにみえるから不思議だ。ここにお酒の揺らぎが入ると、色目が交差して、心地よい酔いと空想を誘う。